pabulumの日記

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pabulumの日記

早稲田の文芸サークルpabulumのブログです。

山戸結希「溺れるナイフ」感想

コンドウです。「溺れるナイフ」観てきました@TOHO CINEMAS新宿。

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夏に先行上映を観ていたので、二回目です。

ご覧になった方も多いと思うので、ネタバレ全開で感想を書きます。

 

まず、時間について。冒頭、ヒロインの夏芽(小松菜奈)が、中学時代に浮雲の町に引っ越してきて、コウちゃん(菅田将暉)と出会うまでには数分の時間しかない。しかもその間が短めのカットで繋がれています。それに対して、夏芽が高校生になり、同級生の大友(重岡大毅)に惹かれていく数々の場面では、長回しの手法が使われています。これは宇野維正も指摘していました。

さて、後述する火祭りと並ぶ名シーンに、大友が「俺ら東京さ行ぐだ」を熱唱するというのがあります。東京に出ていく夏芽に、吉幾三の名曲をフルコーラスでプレゼントするという場面です。ここでも長回しが効果的に使われています。前に観たときは気づかなかったのですが、この場面で夏芽は腕時計をしているんですね。歌唱前、別れを切り出された大友は、彼女を押し倒し「大好きじゃ!」と想いの丈をぶつけます。ここで夏芽は作品中、何度も繰り返される仕草(腕で目元を隠す)をするのですが、その左腕(右だったかも)には黒い革の腕時計が……! 発見した時はテンションが上がりました。一人で。(周りはJKとカップルばかりで、野郎一人で座っているのが大変辛かったです)

 

そして、クライマックスの火祭りの場面。最高でした。菅田将暉かっこよすぎかよ。絵としては文句なしに素晴らしい。また、ここで重要なのが、レイプ魔の死です。かつて夏芽をスターダムから引きずり下ろしたレイプ魔が再登場し、彼女に襲い掛かるのですが、コウちゃんがやってきて、こいつをボコります。夏芽はコウちゃんに「殺せ! やれ!」と依頼します。しかし結局犯人はナイフで首を切って自殺し、血飛沫のような花火が打ちあがります。この死体と凶器の処理を担当するのが、コウちゃんの幼馴染であるカナ(上白石萌音)です。この完璧な役割分担! 我々は映画製作の場に立ち会っているような気分にさせられます。

そして結局何もしていないコウちゃん。ただ見ていることしかできない傍観者のコウちゃん。だからこそ彼は夏芽の「神さん=観客」(冒頭の看板)になれたのかもしれないですね。ラストシーンでバイクの後ろに乗りながら「見ててね」と願う夏芽。「見とるけぇのぉ!」と答えるコウちゃん。うーん、泣ける。月並みな表現ですが、こう思わずにはいられません。これは映画についての映画なのだ、と。

 

(コンドウ)