pabulumの日記

pabulumの日記

早稲田の文芸サークルpabulumのブログです。

街場のキャラクター論 第一回 『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル~after school ACTIVITY~』で遊んでみた。

 皆さま、明けましておめでとうございます。今年もどうぞ当サークルをよろしくお願い申し上げます。 
 さて、今回から「街場のキャラクター論」と題した連載企画を始めることにしました。「キャラクター論」とは言いつつも、それほど堅苦しいものにするつもりはなく、街で見かけた面白そうな素材を紹介しながら、それを通じて「キャラクター」について考えたことを書いていこうというものになる予定です。更新は不定期ですが、なるべく多く更新していこうと思っています。
 第一回である今回は、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル~after school ACTIVITY~』(以下アケフェス)についてです。
ラブライブ!」シリーズは、9人の女子高校生スクールアイドルグループ「μ’s(ミューズ)」が、少子化の影響で生徒が減り、廃校が決まってしまった母校を救うため「スクールアイドル活動」を通じて母校をアピールしていく「みんなで叶える物語」という共通の設定で、雑誌、アニメーション、漫画、CD、アプリゲームなどを通じたマルチメディア展開を行い、多数の支持を得てきました。
「アケフェス」は、この「ラブライブ!」関連シリーズの「アーケード版」として2016年12月6日から稼働を開始し、既に全国のゲームセンターでプレイ出来るそうです。今回、私も実際にタイトーステーション柏店に足を運んで実際にプレイしてみました。

f:id:pablum:20170105125019j:plain
 実際のプレイ台はこんな感じです。画面が上下に設置され、下の画面の周囲にボタンが配置されています。
 アケフェスは所謂「音ゲー」と呼ばれるジャンルに属するゲームで、楽曲に合わせて上から流れてくるリングに合わせてボタンを叩き、そのスコアを競うというものです。第一印象はアプリケーションとして以前からリリースされている「スクフェス」のアーケード版といった感じでしょうか……。
 早速百円を入れてゲームスタート……と思いきや、まずは事前に「NESICA」というTAITOが発行しているゲームデータを記録するためのカード(三百円)を購入する必要があると同行した友人からのアドバイスを受け、慌てて購入。(厳密に言えば、NECICAを購入しなくても遊べるのですが、アケフェスの全ての機能を楽しみたい方は事前の購入をお勧めします)そして万全の状態でいざプレイ!
 まずは、プロフィール等の設定を済ませ、「推しキャラ」として一人、気に入ったキャラクターを選びます。私は「園田海未」ちゃんを選びました。相変わらず可愛いです。そして、楽曲と難易度を選んでゲームは始まります。まずは、海未ちゃんが映えるであろう「ススメ→トゥモロウ」を「HARD」モードで。

f:id:pablum:20170105125128j:plain

 


 ……画面が見づらい! 奥でキャラクターが楽曲に合わせてダンスをしているのですが、それとリングが被ってしまい、ダンスの可愛さに気を取られてリングを見失うこともしばしば。恐らくは慣れの問題だとは思うのですが、一回目は可愛いダンスに見惚れてゲームどころではないという残念な結果に。しかし、アケフェスはゲームオーバーの概念が無く、いくらミスしようとも百円で二曲は遊べるという良心的な設定のおかげでデレデレしながらでも最後まで遊べます。やったね。
 そして二曲遊び終わり、リザルトになると、プレイヤーレベルが上がったり、「デジタルカード」や「ハッピークラッカー」なるものが貰えます。よくわからないまま、台を離れて友人に「海未ちゃん可愛い」などと漏らしていると、そのまま友人に連れられてプレイ台とは別の台の前に。こちらは「センター筐体」というプレイとはまた別の目的のために設置されているようです。

f:id:pablum:20170105125241j:plain


 ここでは主に「デジタルカード」の現物化やデータの管理を行います。「デジタルカード」には様々な種類があり、紹介はしきれないので興味がありましたら公式サイトを参照してください。

f:id:pablum:20170105125351j:plain


 百円で一枚、現物化出来ます。初回サービスで真姫ちゃんのカードが貰えたので現物化しました。
 プレイ中は「可愛い」以外の感情が芽生えない平和なゲームです。


 このゲームをプレイして、キャラクターの「イメージ」と「所有」の問題を考えさせられました。ここではダンスという身体的な表象がCGで描かれるわけですが、それはモーションアクターの動きを処理したものであるという欺瞞があり、さらに「キャラクター」が歌っているとしている楽曲は「声優」というキャラクターとはまた別の存在が発しているものです。ある一つの統合された「キャラクター」のイメージはこうした数々の欺瞞を継ぎ接ぎしたモンタージュのようなものであるのです。今まで展開されてきた様々な媒体で描かれた「物語」は、こうしたイメージの統合のための道具であると言えるでしょう。
しかし、ここでプレイヤーはキャラクターを一つのイメージとして「信じる」ことになります。このゲームは「彼女」達が歌う曲、「彼女」達のダンスをゲームの前提に置くのですから、まずはその「彼女」というある一つの統合されたイメージの存在を「信じる」ことなしには、ゲームを始めることは出来ないのです。このゲームはそれまでの「物語」を引き継ぎ、キャラクターに歌を歌わせ、ダンスを踊らせることによって容易に「キャラクター」を一つの統合されたイメージの全体として表象することに成功していると言えるでしょう。
 そして、このゲームでは「NECICA」によって、「キャラクター」の図像を保存しておくことが出来ます。しかし、データとして保存される以上、キャラクターは情報化され、記号化されます。そうすることで、プレイヤーはキャラクターを「所有」することが出来ますが、それは統合されたイメージの中の一つの断片に過ぎません。断片は全体性を想起させこそすれ、全体になることは出来ません。そのためプレイヤーはまた「全体」を求め、ゲームをプレイすることになります。そこにはプレイヤーが信じるキャラクターの「全体」があります。しかし、それはあくまでもモンタージュであるので、ゲームの側はさらに新たな断片を提供します。この運動によって一つのコンテンツは保たれます。さらに言えば、あるコンテンツが終わる一つの原因として「断片の供給停止」を考えることが出来るはずです。
 アケフェスはこうした寿命の迫るキャラクタービジネスを延命させるための一つのモデルケースとして大いに一般化されることでしょう。

 

 次回は「つば九郎ドアラ」です。お楽しみに。

 (小林錠一郎)